不完全NTSC(2)
世の中亜流はたくさんある

前回のあらすじ。
ノンインターレース映像は取り込めません
以上。


では、次に、不完全なNTSC信号として、正常な(TV放送とか)をビデオに撮った物を再生した場合を考えましょう。
そのためには、もう少し詳しい映像信号の説明が必要になります。

映像信号には、同期信号という物が含まれています。それには、水平同期(H-SYNC)と垂直同期(V-SYNC)という2種類があります。
これらは、走査線の動きをそれぞれ水平方向、垂直方向に対して同期を取る物で、走査線が右端から左端に戻る時が水平同期のタイミングで、下端から上端に戻るときが垂直同期のタイミングです。
つまり、水平同期は走査線が1ラインを書き終わる周期(約15.75KHz)で、垂直同期は走査線が1画面を書き終える周期(約60Hz)です。
ちなみに、走査線は画面外の表示されない部分にもあり、それを含めた走査線の本数は1フレームで525本です。計算すると解りますが、15.75KHz周期で525本描画すると、ほぼ30Hzになりますね。
この同期信号以外にも映像信号の中にはいろいろな信号が入っているのですが、とりあえずその他信号は省略としておきます。他にも何かの信号があるんだな、程度には捉えておいてください。
また、デジタイザチップ(SAA7114H)には、これらの信号を元に音のサンプリング周期を決める機能が入っています。
例えば、48Khzで音声をサンプリングするなら水平同期信号が525回来るタイミングに合わせて、48000回音声のサンプリングを行います。
ですので、正常なNTSC信号をキャプチャしているかぎり、音ずれはほぼありえません。

では、ビデオテープなどに録画した場合、これらの信号はどうなるのでしょうか。
そのためには、ビデオデッキの記録メカニズムについてある程度の知識が必要です。
この解説をすると、どうしてもビデオデッキ内部の写真が必要で、私が用意するとさらに時間がかかる(つまりさぼり)ので、以下のページに詳細が解説されていましたので、そちらをお勧め致します。

音映館〜A&V Photo Movie etc.カメラとビデオフォーマットの話

ビデオにはA・Bヘッドがあり、フィールドの境目でABヘッドのどちらから読みとった信号を使うかを切り替えています。
その切り替えタイミングがデッキの個体差や精度、経年変化で変動します。
ビデオテープからキャプチャした場合などに、画面下部に出るノイズは、この切り替えタイミングによる物です。
もし、この切り替えタイミングが記録時とまったく同一になれば良いのですが、上記理由でデッキによっても変動しますし、また、相手がテープなので延びたりしても変動します。
ですので、記録時とまったく同一になることはかなり難しい、と考えてください。
そうすると、切り替えタイミングが変化することで、ノイズとして画面上にでてきてしまいます。また、4本以上の走査線(フィールドなら2本以上)にまたがってノイズが出ていた場合は、少なくとも水平同期信号に1回はノイズが乗ってしまうという事が考えられます。
そうすると、もし、デジタイザチップ側でノイズの影響で同期信号を読みとれなかった場合、その信号を元に音声のサンプリングも行っているため、映像データと音声データのデータ量で矛盾が起きてしまいます。
また、もしノイズが殆ど乗っていない場合でも、テープの劣化(のび等)やヘッドの回転数のムラなどで、その付近の同期信号が正確なタイミングで出力されない場合もあります。この場合も当然、音声と映像での矛盾が起きてしまいます。
このように、一部の信号がノイズなどの理由で欠落してしまった場合、映像を見るだけでは走査線1本に一瞬(1/60秒)のノイズがのるだけなのですが、キャプチャした物を再生した場合は、そのノイズが発生した箇所で映像と音がずれてしまうという現象が発生します。
これが、ビデオテープを使用した場合に起きやすい、音ずれの大きな理由です。

これに対する対策としては、TBCという物があります。TBCとは、これらの不正なNTSC信号を再構成して正常な信号に戻す機構です。
劣化したテープに対しては、TBCの効果は大きいでしょう。
デッキ側の精度もこのノイズの発生源ですので、なるべく精度の高い物を使うのは当然良い結果になります。
一慨にいうのもどうかと思いますが、VHSの場合「精度が良い=画質が良い、値段が高い」という図式はだいたい間違ってないと思います。
また、ABヘッドの切り替えタイミングというのは、デッキ側のメカの調整によっても変わりますので、録画と再生で同じデッキを使った方が少なくなることも有ります。


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裕之  
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