オーバースキャン
モニタとテレビは根本的に違うのよ。

さて、まずオーバースキャンの説明を始める前に、説明に使う私のTVの説明です(ややこしい・・・)。
この先の写真と説明を見て、常に周囲が黒く空いてるからアンダースキャンじゃないの?という疑問を持たれる方がいると思うので先に説明しておきますね。

うちのTVは、ブラウン管の外周が黒くマスクされていて、画像の投影部分がやや狭くなっています。
つまり、このTVは、元々写真の赤斜線の部分だけが画像を表示できる部分になっています。そして、青斜線の部分は、画像が表示できる構造にはなっていません。
機種によっては、マスク部分がフロントキャビネットの内側に隠れてるものもあります。マスク部分までキャビネットがあると考えてもらえば違いはないです。
と、いうことを先に解ってもらえないと、この先全然説明ができませんので。


それでは、本題に入ります。


TVというのは、PC用モニターに比べて、非常に「作りが適当」です。
つまりは、「安物」な訳です。
いや、確かに上を見ればいくらでも高級品はありますが、世間一般に売れている物だと、PCモニターよりも圧倒的に安く作られている訳です。
まあ、たかが数万円で30インチ前後のテレビが買える訳ですし、PCモニターに比べてスピーカーやチューナーも内蔵していることを考えると、どこか値段を削られているのは当然なわけですね。
では、どこが違うのでしょう。

まあ、違うところは多々あるのですが、ここで問題になるのは、ブラウン管と、その制御回路の精度です。

PCモニターだと、画面サイズやゆがみの調整機能がありますが、TVにはないですよね。TVでは、そこまでの調整項目を作るほど、精度がよくないのです。
かといって、調整のあっていないPCモニターの様に、画面がゆがんだりしているのが目立っては、製品としては問題あります。

TVは普通、常に映像は動いていますよね。それに対し、PCモニターは静止画が映っていることが多いです。PCモニターは、「画面内容を正確に読む」、それに比べ、TVでは、「なんとなく画像を見る」場合が普通だという事です。
その特性差を利用し、TVでは表示方式にオーバースキャンと呼ばれる方式を使用しています。
対照的に、PCモニターではアンダースキャンという方式です。

通常、TV画面では、放送やビデオデッキ・DVDプレーヤーなどから出力されるの画像の外周部を若干切り落として表示しています。
単純に言うと、この外周部を切り落として表示するという方法がオーバースキャンです。


それでは、この2つの画像を見比べてください。
左側の画像は、DVDに記録されている画像です。PCでDVDを再生して、PCモニターに映し出した場合は、このように記録されている部分は全て表示されます。
この画像は、powerDVDで再生、同ソフトの機能の静止画キャプチャで作成しています。
それに対し、右の画像は、同じシーンを普通のDVDプレーヤーで再生した場合の画像です。
二つを見比べると、右の画像は左の画像に比べて、周囲が写っていない事が解るかと思います。

それでは、なぜ、わざわざこのような事をしているのでしょうか。
それは、先に挙げた、「TVの作りはPCモニターに比べて安い」という事に理由があります。


こちらの写真を見てください(クリックで拡大写真が見れます)。
これは、普通のTVで無理矢理アンダースキャン表示をさせた場合です。
(ちなみに、その方法はTVを再調整することで可能なのですが、いろいろと問題があるので方法は公開いたしません。)
前出の写真と比べ、周囲の黒い部分が大きくなっていることが解ると思います。
また、基準に引いた白い線と比べると、画面の周囲が歪んでいることが解ると思います。
このように、普通のTVでアンダースキャンを行うと、不自然に周囲が空く、また、画像の歪みが目立つなどの不都合があります。
また、画像の内容(主に明るさなど)によって、画面の歪み方が変わってしまうため、「動画を扱う」というTVの特性上、非常に「歪み」が気になってしまいます。
また、画像上部にTV局の管理用などに使われてる(と、思う)コードが若干表示されてしまっいてます。
本来、この管理用のコードは垂直帰線期間(詳しくは後で)という映像以外の情報を載せる部分に書かれるのですが、放送局のせいか、それともTVのせいかは解りませんが(たぶんTV・・・)、何故か表示されてしまっているのでしょう。

それでは、実際には表示するときはどの位の範囲まで画像を表示しているのでしょうか。

先ほどの写真で比べるとすぐに解るのですが、その部分に色を付けてみました。
実際には、この緑色で隠れている部分は、TVでは表示されていない領域です。
ただし、この領域は、TV毎に異なります。また、今この説明で使っているTVは、私が勝手に適当に調整しなおしている為、メーカー出荷段階とは全然ちがう可能性があります。

しかし、各TV毎に異なるという事は、映像を作る側としては、あまり外側ぎりぎりに重要な物を描く事ができないという事になってします。たとえば、「ニュース速報」などの文字です。
あまり外側に持っていってしまうと、見えないTVがあり、あまり内側に持ってくると邪魔になってしまいます。
そこで、普通は「セーフティエリア」という仮想領域を目安にし、そのようなレイアウトを考える様にします。

上記赤枠の内側が全画面の90%領域、青枠の内側が80%領域です。

この90%の領域を、「アクションセーフティー」と言い、動く物を認識させたいなら、なるべくこの範囲内に持っていく様にレイアウトします。
また、80%の領域は、「タイトルセーフティー」と言い、文字などの確実に読ませる必要の有る物はこの範囲内にレイアウトするようにします。
フルCGで作成する映像の場合、この様な事を考慮する必要があります。
主に、私のようなキャプチャばかりをする人にはレイアウトの話はあまり関係ないのですが、DVD−Rを使用してDVDを作成する場合は、DVDメニューなどの作成の時にこの点を気をつけないと、TVで見ると文字が欠けて読めない、という事になってしまいます。

そして、この「セーフティエリア」の意味を逆手に取ると、「アクションセーフティー」の外側は、普通のTVでは殆どの場合に見えない、という事を意味しています。
そのため、アクションセーフティーの外側にはそもそも映像を載せない場合や、ノイズなどが載っている場合もあります。
どちらの場合も、普通にTVで見ると全く問題ないのですが、全領域を表示するPCモニターなどを使用して表示した場合は、ノイズが載っている、または、黒や白の領域があるという不自然な状態になってしまします。
キャプチャーをした場合に、取り込んだ画像の周囲がおかしいのはこのためです。
CSやWOWOWなどの場合は、スクランブル解除の際のノイズがでてきたりする場合もあるらしいです(私はどちらも加入してないので解りませんが)。
VHSからのキャプチャーの場合は、画面下部の方にノイズがのる場合が多いです。これもビデオデッキの構造上仕方無いのです。高級機の場合ほど、ノイズは少なく、画面の下部に出る様です。

ちなみに、このノイズがのった状態でキャプチャーした画像を、そのままDVD−Rに焼いてDVDを作成し、TVで表示させた場合は、やはり画面周囲は切り取られるので、このノイズがTV上に現れることはありません。

感想、要望、バグ報告、その他何かありましたら、メールもしくは掲示板にてご連絡ください。
裕之  
ホームに戻る